サクラハトサカフシ

 サクラフシアブラムシの寄生によって、サクラの葉に形成される虫えいで、2本の側脈の間が葉表に折れ曲がって袋状に膨らみ、葉裏で2本の肥大した側脈が堅く接して、有翅胎生虫が出現するまでは密閉されている。幹母成虫期には長さは最大となり30〜50mm、幅は約5mmとまだ狭い。高さ約10mmに達し、頂部に鶏冠状の稜線があり、ときに虫えい全体が葉裏に湾曲する。表面は凸凹しているがやや光沢があり、形成当初から淡紅色をおびるが、特に陽光面は濃紅色を呈す。虫えいの側壁は約1mm、頂部は2〜3mmとなり比較的堅い。後に虫えいの幅が広がり約10mmとなって円筒状になり、表面は全体的に色あせて汚赤色になる。中のアブラムシが脱出するころには、葉裏の側脈が接している開孔部が、1〜4mmの幅で細長く開く。

[虫えい形成者]
 サクラフシアブラムシ アブラムシ科 Tuberocephalus sasakii

[生態]
 サクラの芽の基部で卵態で越冬し、5月に孵化した幼虫が、未展開の新葉の裏に至って側脈の間に寄生する。5月末から6月中頃には幹母成虫となり、虫えい内で幼虫を産仔しはじめる。第2世代は全て有翅胎生虫で、6月中から7月に現れて虫えいを脱出し、2次寄主のヨモギに移住する。ヨモギでは葉裏に白色の幼虫が産み付けられ、この幼虫は無翅胎生虫となる。秋には有翅産雌虫が現れてサクラにもどり、葉裏の主脈に沿って幼虫を産む。これが生長して両性世代の雌となって飛来した雄と交尾し、サクラの芽の基部や小枝の股に産卵する。

[関連寄主植物] エゾヤマザクラ
[虫えい異名] サクラトサカフシ

寄主 エゾヤマザクラ
虫えい(葉表)
虫えい(葉裏)
虫えい(葉表)
2006.06.18/旭川市
虫えい開口
2006.06.28/旭川市
形成初期
虫えい(葉表)
虫えい(葉裏)
2006.06.18/旭川市

虫えい(葉表)
虫えい(葉裏)
2006.06.16/旭川市

形成初期の虫えい
 新葉に寄生した幹母幼虫は、葉裏の中ほどの側脈と側脈の間で汁液の吸収をはじめると、葉は山形に葉表に盛り上がり屈折しはじめる。山形が深くなって側脈が接触する頃には側脈も肥大し、密閉された袋状の虫えいができ、内部で幹母成虫が生長して幹母となって産仔をはじめる。虫えいは葉の展開後も形成され、6月中旬には形成過程の異なる虫えいを観察できる。