双翅目(Diptera) キモグリバエ科(Chloropidae)

[形態]
 イネ科植物の苗条や幼穂、種子を加害することが知られているが、虫えいを形成する種は少ない。春から夏にヨシやススキの先端部の茎に侵入して、数節の節間の伸長を著しく妨げ、節間が側方へやや肥大して虫えいが形成される。虫えいは種ごとに異なり、ヒメヨシメフクレフシ、ニホンオオヨシメフクレフシの場合は、栄養期茎頂の幼穂や茎頂分裂始原部まで幼虫が侵入する。
 ヒメヨシメフクレフシを形成するヒメヨシノメバエの幼虫は、幼茎の先端から摂食しながら進行し、周囲の組織を腐敗させ、分裂始原部を破壊したのちに、その奥の節まで進むため、側方への虫えいの肥大は少なく、伸長が停止した節の成長が不均衡になり、わずかに傾斜することが多い。
 ニホンオオヨシメフクレフシを形成するニホンオオヨシノメバエでは、初齢幼虫がただちに分裂始原部近くに到達し、組織を腐敗させない。ゆっくり摂食しながら加齢するので、節間成長はゆっくりと停止して多くの短縮した節ができ、さらに始原部に残った形成層の2次肥大が起こって、大きな虫えいが形成される。
 キタヨシメフクレフシでは生殖期のヨシの先端より、幼虫が摂食しながら進行し、組織を腐敗させ、幼穂や若葉部にとどまる。穂のふくらみに加えて維管束形成層の肥大が顕著で、大形の虫えいが形成されるが、全体が軟らかくふかふかしている。

[生態]
 虫えいを形成するヨシノメバエ属(Lipara)は年1世代、立枯したヨシ先端の虫えい内で、終礼幼虫または蛹で越冬する。幼虫で越冬したものは翌春蛹化し、いずれも虫えい内で羽化した後で脱出し、数日を経て若い葉鞘などに産卵する。