双翅目(Diptera) タマバエ科(Cecidomyiidae)

[形態]
 外観はハエというより、カを小さくしたような弱々しい昆虫で、翅脈の少ない翅と数珠状の長い触角を持つことや、脚の脛節末端に距刺が無いことで区別できる。また3齢(終齢)幼虫やまれに2齢幼虫の前胸腹面に胸骨と呼ばれるキチン質の部分がみられ、タマバエ科の幼虫の特徴となっているが、ブナやヨモギに虫えいを作るものには胸骨の無いものが多い。

[生態]
 虫えいを形成する大部分のタマバエの成虫の口器は退化し、ほとんど摂食しないので寿命は短く1〜2日。羽化後しばらくすると雄が飛びはじめ、寄主植物上の虫えいから羽化する場合は、虫えい近くで静止している雌をみつけて交尾する。また地上の虫えいや繭から羽化する場合は、下草や枯葉などに静止している雌と交尾する。雌は交尾後しばらく静止をつづけた後、産卵場所を求めて飛び立つ。好適な場所が見つかると、雌はあまり移動せずに、同じ場所か周辺に集中して産卵する傾向がある。
 成虫の寿命が短いため、タマバエの羽化時期は産卵対象となる寄主植物の展葉や開花時期に合致しなければならず、年一回しか展葉、開花しない木本を寄主とする生活史は、必然的に年1世代となる。一方、何度も連続して展葉するような草本を寄主とするものでは、年間世代数が複数となることが多い。
 落葉樹や冬に枯死する草本に虫えいを作るタマバエは、秋までに3齢幼虫となり、虫えいから脱出して地中で繭を紡いで越冬するか、落下した虫えいや落葉とともに落ちた虫えい内で越冬する。

[虫えい形成タマバエ]
 虫えいを形成する昆虫の中でタマバエがしめる割合が高く、全体の40〜50%におよぶ。またタマバエによって虫えいが形成される植物も多岐にわたり、中でもヤナギ属やブナ属、ヨモギ属に多くの種類の虫えいが形成される。虫えいは葉に形成される場合が最も多いが、その他の器官や組織におよび、形状も多種多様である。
 一般に、虫えいが形成される植物の種や部位および形状などはタマバエの種ごとに特異的であり、虫えいを見るだけで種の同定が可能なものも多い。ただし、雌雄で虫えいの形状が異なる場合などの多型現象も知られているので、同定には注意が必要である。